iPhoneより14年前に登場!シャープ「Zaurus」とは?スマホを先取りした日本のPDAを解説

2007年に登場し、スマートフォンの普及を大きく加速させたiPhone。
しかし、その14年も前となる1993年、日本ではシャープが「Zaurus(ザウルス)」という携帯情報端末を発売していました。
Zaurusは電話こそできませんでしたが、タッチ操作によるスケジュール管理や住所録から始まり、その後はメール、インターネット、写真、音楽などへ機能を拡大していきました。
現在のスマートフォンとまったく同じものではありませんが、「必要な情報や機能を小さな端末にまとめて持ち歩く」という発想は、現代のスマートフォンにも通じるものがあります。
さらに興味深いことに、同時代にAppleが開発したPDA「Newton MessagePad」の初期ハードウェア製造にもシャープが関わっていました。
この記事では、Zaurusとはどのような製品だったのか、Apple NewtonやiPhoneとの違い、日本の携帯電話へどのような技術がつながっていったのかを解説します。
- Zaurusとはどのような端末だったのか
- ZaurusとiPhoneの共通点・違い
- Apple Newtonとシャープの関係
- Zaurusがどのように進化したのか
- シャープの技術が後の携帯電話へどうつながったのか
目次
Zaurus(ザウルス)とは?

Zaurusは、シャープが展開していたPDA(携帯情報端末)です。
初代となる液晶ペンコム「Zaurus PI-3000」は1993年に発売されました。
PDAとは「Personal Digital Assistant」の略で、スマートフォンが普及する以前に使われていた携帯型コンピューターの一種です。
当時は紙の手帳に代わって、
- スケジュール管理
- 住所録
- メモ
- 名刺管理
などを電子的に管理する用途が中心でした。
その中でもZaurusはペンを使った操作を取り入れ、単なる電子手帳を超えた携帯情報端末として進化していきます。
初代Zaurusは1993年に登場
シャープが発売した初代Zaurus「PI-3000」は、スーツのポケットに入るサイズと約250gの重量を実現していました。
発売当時の価格は6万5,000円。
シャープは「紙とペンを超える情報ツール」という考え方のもと、液晶画面とペンを組み合わせた情報端末としてZaurusを開発しています。
その後、ファクシミリ、パソコン通信、インターネットアクセスなどの機能を追加しながら進化しました。
Zaurusは何が画期的だった?
今見るとZaurusは古い電子機器ですが、1990年代という時代を考えると先進的な機能を備えていました。
ペンによる画面操作
現在のiPhoneは指で画面を操作しますが、Zaurusはスタイラスペンで画面を操作するスタイルを採用していました。
画面上からスケジュールを選んだり、情報を入力したりできるため、物理キーボード中心だった当時のパソコンとは大きく異なる操作感でした。
ただし、iPhoneのような指によるマルチタッチ操作ではありません。
そのため「Zaurus=昔のiPhone」と考えるのではなく、タッチ操作を活用した携帯情報端末の先駆けのひとつと捉えるのが正確です。
外出先で通信できた
Zaurusはシリーズが進化するにつれて通信機能も強化されました。
対応する通信機器などを組み合わせることで、
- 電子メール
- パソコン通信
- Webサイトの閲覧
などが可能になりました。
後期のZaurusではWebブラウザも搭載され、外出先でWebサイトを閲覧したり、添付ファイル付きのメールを送受信したりできるモデルも登場しています。
スマートフォンが一般化する前に、「外出先でインターネットへアクセスする」という使い方を実現していたわけです。
アプリのように複数の機能を使えた
Zaurusにはスケジュールやメールだけでなく、モデルが進化するにつれてさまざまなソフトウェアが搭載されました。
後期モデルでは、
- Webブラウザ
- メール
- 文書作成
- 表計算
- 辞書
- 音楽再生
- 動画再生
などにも対応しています。
現在のスマートフォンほど自由にアプリを追加できる環境ではありませんが、1台の携帯端末で多くの作業をこなすという発想は非常に近いものがあります。
ZaurusとiPhoneは何が似ている?
ZaurusとiPhoneには共通する部分がある一方、まったく異なる部分もあります。
| 項目 | Zaurus | iPhone |
|---|---|---|
| 初登場 | 1993年 | 2007年 |
| 主な操作 | ペン・キー操作 | 指によるマルチタッチ |
| 通信 | モデルや外部通信機器による | 携帯電話通信を標準搭載 |
| 電話 | 基本的に非対応 | 対応 |
| Web・メール | 対応モデルあり | 対応 |
| ソフトウェア | 各種ソフトを搭載 | App Storeから追加可能 |
両者に共通しているのは、情報管理・通信・インターネット・マルチメディアなどを小型端末へ集約するという考え方です。
一方、iPhoneは携帯電話を中心に、マルチタッチUIや本格的なWebブラウザ、後のApp Storeによるアプリ配信などを統合しました。
そのため、Zaurusを「iPhoneの原型」と断定するのではなく、スマートフォンへつながる発想を早い時期から実現していたPDAと見るのがよいでしょう。
実はAppleのNewtonにもシャープが関わっていた
Zaurusの歴史を調べるうえで興味深いのがAppleとの関係です。
Appleは1993年、PDA「Newton MessagePad」を発売しています。
Newtonも、
- タッチペンによる操作
- 手書き文字認識
- 住所録
- スケジュール管理
などを備えた携帯情報端末でした。
そして、初期Newton MessagePadのハードウェア製造を担当した企業のひとつがシャープです。
シャープ自身もAppleからNewton技術のライセンスを受け、「ExpertPad」というNewton OS搭載端末を展開していました。
ただし、ここは旧記事で誤解しやすかったポイントです。
「ZaurusをAppleと共同開発した」「Zaurusの技術がそのままiPhoneになった」という事実が確認されているわけではありません。
1990年代前半にはAppleもシャープも、それぞれ次世代の携帯情報端末を模索していたと考えるのが適切です。
Zaurusはその後どこまで進化した?
初代PI-3000以降、Zaurusは長期間にわたり進化を続けました。
特に2000年代のモデルではLinuxを採用し、QWERTYキーボードを搭載するなど、より小型PCに近い製品へ変化していきます。
最終期の「SL-C3200」は、
- 3.7インチVGA液晶
- QWERTYキーボード
- 6GB HDD
- Webブラウザ
- メール
- 動画・音楽再生
- SDカード・CFカード
などに対応していました。
現在のスマートフォンと比較すれば性能差は大きいものの、2006年当時にポケットサイズの端末でWeb・メール・文書作成・動画・音楽まで扱えたことを考えると、非常に多機能な製品だったことが分かります。
Zaurusの技術はカメラ付き携帯にもつながった
Zaurusと現在のスマートフォンを考えるうえで、もうひとつ興味深いのがカメラです。
シャープによると、後にカメラ付き携帯電話「J-SH04」を開発する際、Zaurus向けに開発していたカメラの小型化技術が活かされました。
J-SH04は2000年にJ-PHONEから発売され、11万画素のCMOSカメラを搭載。
撮影した写真をその場でメール送信できることが特徴で、その後「写メール」が広く普及するきっかけとなりました。
旧記事ではJ-SH04を「世界初のカメラ付き携帯電話」としていましたが、これは表現を修正した方が安全です。1999年には京セラのPHS「VP-210」がカメラを搭載していました。J-SH04は、撮った写真をメールで送る使い方を普及させた初期の代表的なカメラ付き携帯電話として知られています。
つまりZaurusそのものがスマートフォンになったわけではありませんが、そこで培われた小型モバイル機器の技術が後の携帯電話へ活用された例は実際にあります。
Zaurusは「早すぎたスマートフォン」だった?
Zaurusを現在から振り返ると、「あと電話機能があればスマートフォンだったのでは?」と感じるかもしれません。
しかし、スマートフォンは単にPDAへ電話を追加しただけの製品ではありません。
高速なモバイル通信、タッチ操作に最適化されたOS、アプリ配信プラットフォーム、Webサービス、クラウドなど、さまざまな技術とインフラが組み合わさることで現在の形になっています。
1993年当時はインターネットも携帯電話網も現在ほど発達していませんでした。
その意味ではZaurusが普及した時代は、端末側のアイデアに通信環境やサービスがまだ追いついていなかった時代だったともいえるでしょう。
Zaurusに関するよくある質問
Zaurusは世界初のスマートフォンですか?
いいえ。
ZaurusはPDAとして発売された製品で、携帯電話機能を標準搭載したスマートフォンではありません。
ただし、タッチ操作や情報管理、メール、Web閲覧など、後のスマートフォンと共通する機能を早期から実現していました。
ZaurusはiPhoneの元になったのですか?
Zaurusが直接iPhoneの元になったと確認できる資料はありません。
両者には共通する発想がありますが、「Zaurusを参考にiPhoneが作られた」と断定することはできません。
AppleとシャープはZaurusを共同開発したのですか?
ZaurusをAppleと共同開発したわけではありません。
一方で、シャープはAppleのNewton技術のライセンシーであり、初期Newton MessagePadのハードウェア製造にも携わっていました。
Zaurusはいつ発売されたのですか?
初代Zaurus「PI-3000」は1993年に発売されました。
シャープの資料では1993年10月発売とされています。
Zaurusの最後のモデルは?
一般向けZaurusの最終モデルとして知られているのが、2006年発売の「SL-C3200」です。
6GBのHDDや3.7インチVGA液晶、QWERTYキーボードなどを搭載していました。
iPhoneより14年前、日本にはZaurusがあった
2007年にiPhoneが登場する14年前、日本ではすでにシャープのZaurusが誕生していました。
もちろん、「日本がiPhoneを先に作っていた」という表現は正確ではありません。
しかし、
- 画面を直接操作する
- 情報をデジタルで持ち歩く
- 外出先でメールを送受信する
- インターネットを見る
- 写真・音楽・動画を扱う
といった現在のスマートフォンにつながる使い方を、Zaurusが早い時期から追求していたことは確かです。
さらにシャープはAppleのNewton製造にも関わり、Zaurusで培ったカメラ技術は後のJ-SH04などにも活用されました。
現在ではスマートフォン1台で当たり前にできることも、1990年代には多くの技術者が試行錯誤しながら形にしてきたものです。
Zaurusは、現在のスマートフォンが生まれるまでの歴史を知るうえで重要な日本の携帯情報端末のひとつといえるでしょう。


















