今さら聞けない携帯電話の「人口カバー率」とは何か?サービスエリアの広さを比較するには何を参考にすべき?
全国で5Gの普及が急がれる中、「自分が住んでいるエリアはいつ開通するのか?」「使えるエリアが広いキャリアはどこか?」と考えている方も多いのではないでしょうか。携帯電話の通信エリアの広さを比較する要素として、従来から用いられているのが「人口カバー率」とよばれる指標です。現在の4G LTE回線は各社軒並み100%に近い数値となっているほか、5Gにおいても数年以内に80%台を目指すとしています。
しかし、中には「圏外のエリアが意外と多く、そこまで浸透しているとは思えない」と感じる方もいることでしょう。そこで今回の記事では、そもそも人口カバー率とはどのような指標なのか、あらためてその定義を紹介するとともに、算出方法や主要キャリアの比較、気になる5Gの人口カバー率の予定なども詳しく解説します。
人口カバー率とは
まずは携帯電話事業者が公表している「人口カバー率」とはどのような指標なのか、その定義と算出方法について紹介しましょう。
人口カバー率の定義
人口カバー率とは、総務省によって以下のように定義されています。
“全国を約500m四方のメッシュに区切り、メッシュの過半をカバーした際に、当該メッシュの人口を全人口で除したもの”
たとえば、500m四方のメッシュ内であってもつながる場所とつながらない場所が存在しますが、メッシュ内の過半数がつながる場合は100%とみなすこととしています。なお、メッシュあたりの人口は国勢調査による統計情報がベースとなっています。
そのため、仮に人口カバー率が100%を達成したとしても、日本全国津々浦々でつながるとは限らず、500mメッシュ内に圏外のエリアが存在する可能性はあります。また、そもそも人が居住していない場所では人口カバー率の算出にあたって影響が及びません。
ちなみに、2014年以前の人口カバー率の定義は、市役所や町村役場などが圏内の場合、当該自治体全域が圏内とみなされていました。しかし、その後現在の定義に変更されています。
人口カバー率の算出方法
総務省が定義している人口カバー率を、実際の式に当てはめてみたものが以下の通りです。
カバーしているエリアの人口÷国内総人口×100
上記でも説明した通り、「カバーしているエリアの人口」は国勢調査での統計情報が基となっています。そのため、基地局の整備や撤去だけではなく、カバーしているエリアの人口に変動があった場合においても人口カバー率が変化することがあります。
主要通信事業者の人口カバー率比較
NTTドコモ、KDDI、SoftBankの主要キャリアでは、いずれも4G LTEの人口カバー率は99%以上を達成しています。3Gから4G LTEへと移行したのが2010年代に入ってからですが、すぐに現在のカバー率を達成できたわけではありません。SoftBankの例を見てみると、2013年に人口カバー率91%を達成し、その後毎年のように膨大な設備投資を行い現在の人口カバー率を達成できたことになります。
ただし、基地局の数や設置場所は各キャリアごとに異なるため、同じ人口カバー率であったとしてもキャリアによってつながる場所もあれば、つながらない場所も存在します。サービスエリアの広さを全体で比較する場合には人口カバー率のデータが参考になりますが、個別のスポットを比較する際には必ずしも正しく反映されないことがあるため注意が必要です。
5Gの人口カバー率はどうなる?
人口カバー率について多くの方が関心をもっているのが、5Gのエリア拡大ではないでしょうか。そこで、こちらも主要キャリアごとに5Gの人口カバー率の計画や予定について比較していきましょう。
NTTドコモ
NTTドコモは2021年5月に実施した夏モデル発表会の中で、2022年3月末までに55%、2023年3月末までに70%、2024年3月末までに80%の人口カバー率を目指すを発表しました。
また、同発表会では、2021年3月末までに4G基地局を転用しない純粋な5G(スタンドアロン5G)を展開することも合わせて発表しています。スタンドアロン5Gが実現されれば、高速大容量・低遅延・多接続といった5Gの特性をフルに活用できるようになります。
KDDI
KDDIでは2021年1月に発表したプレスリリースの中で、2022年3月末までに5G基地局を5万局整備し、人口カバー率90%の達成を目指すとしています。これは700MHz帯を使用した5Gの整備を進めるもので、対象機種は限られるものの他社に先駆けて5Gの人口カバー率を高めたいという狙いがうかがえます。
2021年春から始まった700MHz帯の5G整備によって、JR東日本の山手線全駅、およびJR西日本の大阪環状線の全駅において5Gが利用できるようになります。
SoftBank
SoftBankは2021年6月、「ソフトバンク5Gコンソーシアム」を立ち上げ、企業や自治体などと連携し5Gの商用化を目指すためさまざまな実証実験に取り組んでいくことを発表しました。また、それに合わせて2022年春までに人口カバー率90%の達成を目指すほか、2021年度内にスタンドアローン方式による5Gサービスの提供も目指しています。
正確な通信エリアの広さを比較するには?
今回紹介してきたように、人口カバー率は大まかなエリアの広さを把握するための参考値にはなるものの、正確な通信エリアの広さを比較するうえではより詳細なデータが必要です。特にこれから本格化する5Gにおいては、より細かなサービスエリアを調べたうえでキャリアを選定する必要があるでしょう。
そこで、サービスエリアの比較においてぜひ参考にしていただきたいのが、各キャリアで公開しているエリアマップです。大手キャリアでは都道府県別のエリアマップを公開し、4G LTEおよび5Gの対応地域を色別に記載しており、一目で使えるエリアとそうでないエリアが判別できるようになっています。自宅や職場はもちろんですが、通勤経路や自宅周辺の道路など、全体をくまなくエリアマップで見比べてみましょう。
また、5Gのエリア拡大予定を判断する際には、現在利用できるエリアだけでなく、今後の拡大予定エリアも参考にすると良いでしょう。たとえばNTTドコモでは、5ヶ月先までの5G拡大予定エリアを色分けで公開しているほか、KDDIでは数ヶ月先までの拡大予定も公開しています。