格安料金プランは通信事業者にどう影響を与える?今後変革が予想される通信業界のビジネスモデル
2020年に5Gの商用サービスがスタートし、2021年には「ahamo」や「povo」「LINEMO」といった格安料金プランの提供が始まりました。携帯電話料金が下がるのはユーザーにとってメリットがある一方で、通信事業者にとっては収益悪化が懸念されています。
今回の記事では、格安料金プランの契約数はどの程度増えているのか、各社の実績を紹介するとともに、通信事業者のビジネスモデルは今後どのように変革していくのか、それに伴いユーザーにどのような影響が考えられるのかについても詳しく解説します。
契約数トップはahamo
「ahamo」ブランドを展開しているNTTドコモは、2021年5月12日に開かれた決算発表会において、4月末の時点でahamo契約数が100万件を突破したことを明らかにしました。2021年3月末の時点で、NTTドコモの総契約数は8,000万件以上にのぼりますが、わずか1ヶ月ほどで100万件を超える契約があったということは、いかにahamoへの注目度が大きいかを示唆しているデータともいえるでしょう。
ちなみに、ahamoはオンライン受付専用プランということもあり、30代以下の若年層のユーザーが大半を占めているほか、NTTドコモからの切り替えをするユーザーも多い傾向にあることも紹介。3キャリアの中でもっとも早いタイミングで格安料金プランを発表したこともあり、事前に情報を調べてahamoへの切り替え手続きをしたユーザーが多かったと考えられます。
また、NTTドコモは2021年3月末時点で5Gの契約数が309万件に達したことも明らかにしましたが、5G対応のahamoが100万件と考えると、およそ3分の1にあたるユーザーがahamoを利用している計算となります。それほどahamoユーザーは新しいテクノロジーや情報への感度が高いこともうかがえます。
povo・LINEMOも好調
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格安料金プランの契約数が好調なのはNTTドコモだけではなく、KDDIやソフトバンクも同様の傾向がうかがえます。KDDIは2021年7月30日、決算説明会の場で格安料金プラン「povo」の契約数がおよそ100万件に達していると明らかにしました。
NTTドコモとは異なり、明確に「100万件を超えた」とは表現していないものの、契約数としてはahamoと大差がないレベルと考えられます。KDDIではもともと、ライトユーザー向けにUQ mobileというサブブランドを展開しています。povoの受付開始直後は申し込みが殺到したものの、その後UQ mobileの販売にも注力した結果、povoの契約数は現在落ち着いている状態だといいます。
一方のソフトバンクは、LINEMOの契約数について公式には明らかにしていません。しかし、2021年5月11日に示された決算説明資料では、LINE MOBILEおよびLINEMOを合算した契約数は倍増しており、好調を維持していることがうかがえます。さらにソフトバンクでは、半数以上のユーザーについて月間データ使用量が3GB以下であることに着目し、2021年7月15日からLINEMOで「ミニプラン」の提供を開始しました。
これは月間3GBまでのデータ容量を月額900円(税別)の基本料金で利用できるというもの。さらにLINEの利用についてはカウントされない「LINEギガフリー」と、1回5分以内の国内通話が無料となる「通話準定額オプション」の月額500円(税別)も無料で利用できます。このように、さらなるユーザーの裾野を拡大するため、ソフトバンクではLINEMOでさまざまな攻勢を仕掛けています。
通信事業者各社の収益は悪化が見込まれる
格安料金プランの登場によって毎月の料金が安くなることはユーザーにとってメリットがある一方で、携帯電話サービスを提供する通信事業者にとっては収益悪化につながる要因となることも事実です。
2021年3月期の決算内容は、各社ともに格安料金プランが本格導入される以前の実績が反映されているため、いずれも増益となっています。しかし今後、多くのユーザーが格安料金プランへ移行するとARPU(1契約あたりの売上金額)が低下することは明白で、それが各社の決算にも反映されていくでしょう。
多くの国民がiPhoneをはじめとしたスマートフォンを所有している現在、新規契約の獲得によって収益を伸ばすことは難しい現状があります。また、他社からの乗り換えを獲得するとしても、3社ほぼ横並びの料金である以上、乗り換えのユーザーを獲得することも簡単ではありません。
では今後、通信事業者は何を成長の原動力としていくのでしょうか。注目されているのが、IoTやAIといった次世代のテクノロジー分野です。これらのテクノロジーは5Gとの関連性も高いため、スマートフォンだけではなくIoTやAIを組み合わせたソリューションとして提供することで、ユーザーの満足度を高めながら通信事業者各社は収益を維持できるようになるはずです。
IoTやAIとの組み合わせによるiPhoneの新たな使い方
格安料金プランによって通信事業者の収益が悪化すると、通信品質が低下したり、5Gの整備が遅れたりするのではないかと不安を感じる方も少なくないでしょう。
しかし、今後本格化する5Gはスマートフォンのためだけに利用されるものではなく、IoTやAIといったさまざまな次世代のテクノロジーと融合します。その結果、通信事業者は携帯電話だけではなく、さまざまな技術を応用したソリューションを提供できるようになり、これまで以上の成長が見込めます。
たとえば、IoTとiPhoneを組み合わせることで自宅のさまざまな家電製品が操作できたり、自宅のカギや車のカギがiPhoneで施錠・解錠できるようになるかもしれません。スマートフォンでの通信コストは今後も下がり、高品質のネットワークを格安で利用できるのが当たり前の時代になるでしょう。