iPhoneが身分証明書として利用できる?iOS15注目の新機能を解説
Appleは2021年6月7日、例年開催している開発者向けカンファレンス「WWDC」において次期iPhone向けOSであるiOS15を発表しました。iOS15は2021年にリリース予定とのことで、今から大いに注目されているのですが、実はこの中で革新的な機能が発表されました。それは「iPhoneを身分証明書として活用できる機能」。
すでにクレジットカードや電子マネーなどをiPhoneに集約できる機能は実装されていますが、iOS15によってさらに便利な使い方が実現できるようになります。今回の記事では、iPhoneを身分証明書として利用する機能の詳細について、現時点で分かっていることを紹介します。
目次
iPhoneが身分証明書になる?iOS15アップデートの概要
今回発表されたiOS15では、FaceTimeやSafariのアップデートなど、さまざまな新機能が目白押しですが、中でも注目されているのがiPhoneを身分証明書として活用できる機能です。
基本的な仕組みは、現在提供されているWalletアプリと同様で、クレジットカードや電子マネーをWalletアプリに登録するように身分証明書もアプリ上に登録できるようになります。
しかし、個人情報をiPhoneに登録するとなると、サイバーセキュリティの穴をかいくぐって情報が流出するのではないかといった心配をする方も少なくありません。iPhoneのWalletアプリは、たとえばクレジットカードを登録する場合、iPhoneとAppleのサーバー間では高度な暗号化が行われており、第三者が不正アクセスによって情報を抜き取ったとしても暗号を解読することは極めて難しいのです。また、クレジットカードをカメラで撮影して登録することもできますが、この際にも撮影したデータはiPhoneのライブラリには一切保存されません。
身分証明書を登録する際においても、Appleはこれらの高度なセキュリティ対策を実装し安全性を確保すると予想され、ユーザーは安心してデジタル化された身分証明書を利用できます。
身分証明書のデジタル化で押さえておきたいポイント・注意点
iOS15へのアップデートによって注目される身分証明書のデジタル化ですが、いくつか押さえておきたいポイントや注意点があります。
身分証明書のデジタル化は米国のみ
iOS15へのアップデートによって加速すると思われる身分証明書のデジタル化ですが、実は当面の間対応できるのは米国のみで、日本における導入はまだ未定となっています。また、米国においても州によって対応可否は異なり、iOS15の提供がスタートした直後から米国全土で利用できるものではないようです。
ちなみに、iOS15でデジタル化に対応する身分証明書は運転免許証で、iPhoneで運転免許証をスキャンすることでWalletアプリに情報が登録され、利用できるようになります。
マイナポータルとの違い
日本ではマイナンバーカードの普及が進んでおり、スマートフォンでは「マイナポータル」とよばれるアプリをインストールすることで、マイナンバーカードの情報をスキャンし本人確認が可能となっています。しかし、今回Appleが提供する新機能は、身分証明書のデータを照合するのではなく、あくまでも身分証明書のデータをデジタル化しiPhoneに保存しておく機能です。そのため、iPhoneそのものを身分証明書の代わりとして利用できます。
デジタル化された身分証明書はどのように活用できる?
「運転免許証がiPhoneに集約されるということは、米国ではiPhoneさえあれば運転免許証を携帯しなくても良くなるのか?」と考える方も多いと思います。しかし、iOS15のリリース直後は、空港での搭乗手続きにおいてセキュリティチェックを効率化するための用途としてのみ運用される予定です。そのため、それ以外の本人確認書類としての提示などには従来通り運転免許証の原本を提出しなければなりません。
今後身分証明書のデジタル化は一般化するか?
iOS15へのアップデートによって新たに実装される予定の身分証明書のデジタル化ですが、現時点では利用用途も限定的なため、本格的な社会実装という意味ではもう少し時間を要するかもしれません。また、そもそも日本を含む世界各国では法律上の問題もあり、すぐさまiPhoneへ身分証明書を集約できるとは限らないでしょう。
しかし、日本政府はマイナンバーカードを普及させデジタル化を推進していることからも分かる通り、将来的に身分証明書のデジタル化の流れは確実にやって来ると考えられます。
iPhoneはこれまで、クレジットカードや電子マネー、車のキーをデジタル化しiPhoneに集約することを実現しており、今後は自宅や職場、ホテルのキーもデジタル化しiPhoneに集約させる予定です。身分証明書を含め、さまざまな重要データをiPhone1台で操作・制御できる未来はすぐそこまで近付いてきています。