eSIMとは?今後スマートフォンはどう変わる?
2.eSIMのメリットとデメリット
-2-1・eSIMのメリット
-2-2・eSIMのデメリット
3.eSIMの対応キャリアと対応端末端末
4.eSIMはなぜ注目されるようになった?
-4-1・IoTに欠かせないeSIM
5.eSIMで今後どう変わる?
-5-1・ショップに来店する必要がなくなる
-5-2・IoTデバイスの普及
iPhoneをはじめとしたスマートフォンに欠かせないSIMカード。携帯電話ネットワークに接続するうえでSIMカードはなくてはならない存在です。携帯電話を契約時に小さなチップが渡されますが、普段はスマートフォン内部に格納されているため気にしている人は少ないと思います。しかし、最近になってSIMカードにも新たなイノベーションの波が起こっており、「eSIM」というものが登場しています。今回は、今後の携帯電話業界の主流になっていくであろうeSIMについて詳しく解説していきます。
「eSIM」とは?
そもそもeSIMという言葉を初めて耳にする人も多いのではないでしょうか。まずはeSIMを紹介する前に、そもそもSIMとは何なのかということから説明していきましょう。
SIMとは「Subscriber Identity Module」の頭文字をとったもので、日本語では加入者認識モジュールともよばれています。5mm四方程度の小さなチップのなかに携帯電話加入者の情報が詰め込まれているものです。なかには暗号のようなものが記録されており、これを携帯電話に差し込むことによって電話番号が認識される仕組みです。
そして基地局との通信を行い、それぞれに契約した内容と照らし合わせてサービスが提供されるという仕組みとなっています。
これが従来のSIMカードなのですが、それではeSIMとは一体何なのでしょうか。eSIMは「embedded Subscriber Identity Module」の頭文字をとったもので、このうちembeddedとは「埋め込む」という意味があります。すなわち、従来のようにスマートフォン本体にSIMカードを差し込むのではなく、あらかじめ本体のなかにSIMカードを埋め込んでおくというものがeSIMです。
主に2Gの頃の携帯電話は本体に電話番号情報などを書き込んで使用していましたが、それに違いものと考えると良いでしょう。しかし、2Gの携帯電話ではSIMではなく「ロム」とよばれていたことからも分かるとおり、eSIMとロムは全く異なるものであることが大前提となります。
eSIMのメリットとデメリット
eSIMの概要が分かったところで、「SIMカードを単に埋め込み式にしただけで何が変わるの?」と感じる方も多いと思います。そこでここからは、eSIMのメリットとデメリットを詳しく紹介していきましょう。
eSIMのメリット
<新規契約や乗り換え手続きの簡略化>
eSIMは物理的なSIMカードが不要になることによって、新規契約や他社から乗り換えの手続きが簡略化されます。これまでは新規契約や乗り換え手続きの際、新たに契約する通信事業者から専用のSIMカードを受け取る必要がありました。店頭で手続きを行う場合であればその場で受け取ることができますが、オンラインショップなどで契約をした場合はSIMカードの到着まで数日間待たなければなりませんでした。
しかし、eSIMであれば通信事業者との契約完了後、スマートフォン本体があればすぐに反映されるため、面倒な手続きも簡略化されるメリットがあります。特に最近では格安スマホ事業者など、オンラインで手続きを行う事業者が増えています。eSIM対応の端末を持っていれば、フレキシブルに通信事業者を乗り換えて使用することも可能になるはずです。
<海外でも手持ちのスマートフォンをそのまま利用できる>
新規契約や乗り換え手続きが簡略化されるということは、日本から海外へ渡航した際にも現地の通信事業者との契約も簡素化されることになります。
日本国内の通信事業者はほとんどが国際ローミングに対応していますが、長期間滞在する場合は海外の通信事業者と契約したほうがコストも安く済みます。さまざまな事情によって現地の通信事業者と契約する必要がある場合は、従来のSIMカードよりもeSIMに対応した端末のほうがSIMの差し替えも必要ないため利便性は高いといえるでしょう。
<スマートフォン以外のデバイスにも対応できる>
SIMカードがなくなるということは、スマートフォン以外のデバイスにも活用の幅が広がってくることも意味しています。実際に、2017年に発売したApple Watch Series 3ではeSIMが採用されることになりました。スマートフォンよりもさらに小型のウェアラブル端末において、カードの差し込みが必要ないeSIMは大きなメリットといえるでしょう。
<複数キャリアとの契約が1台の端末で可能になる>
スマートフォンとモバイルWi-Fiルーターを2台契約している方も多いと思いますが、eSIMを活用することによって1台のスマホで複数の通信事業者との契約が可能になります
たとえば、普段はスマートフォンとして利用しているが、年に数回程度旅行に行く機会があり、外出先でもパソコンを使ってインターネットをしたいと考えたとき、一定期間のみデータ通信専用のプランを契約する使い方もあります。
eSIMのデメリット
<対応端末が少ない>
eSIMの唯一かつ最大の問題点として考えられるのは、対応端末の少なさです。特に日本国内の通信事業者は、2年契約、3年契約という期間を定めた料金プランを提供していることからも分かる通り、できるだけユーザーを抱え込んでおきたいという姿勢が垣間見えます。容易に乗り換えが可能になってしまうと、通信事業者としての収益も不安定になってしまうため、あまり積極的ではありません。料金プラン自体が有期契約が前提となっているとはいえ、eSIMは容易な乗り換えを可能にする材料である以上は普及が遅れていると言わざるを得ません。反対に考えれば、ユーザーにとってeSIMはデメリットがほとんど見当たらないものといえるでしょう。
eSIMの対応キャリアと対応端末端末
日本国内においてeSIMは普及が遅れているとはいえ、2019年7月から格安SIMの事業者であるIIJ mioがeSIMプランの提供を開始しました。あくまでもベータ版となっているため、今後正式なプランとして提供される予定ではありますが、一ヶ月あたり6GBで月額1,520円という安さで利用できます。
ちなみに、eSIMに対応しているのはデータ通信のみで、SMSや音声通話が可能なプランは提供未定となっています。メインの回線として利用するというよりは、あくまでもサブのデータ回線用として利用するケースを想定していると思われます。
ちなみに、IIJ mioがeSIMプランとして対応している端末は以下の通りです。
■IIJ eSIM動作確認端末
・iPhone XS Max
・iPhone XR
・iPad mini(第5世代)
・iPad Air(第3世代)
・iPad Pro(11インチ)
・iPad Pro(12.9インチ 第3世代)
・Surface Pro LTE Advanced
上記のうち、iOS搭載端末はいずれもiOS12.1以降が対象となります。また、Surface Proの場合はWindows10 RS4以降が対象となります。
また、あらかじめSIMフリーモデルであれば問題ありませんが、SIMロックがかかっている端末の場合はSIMロック解除が必須となります。SIMロック解除の手続きはWEB上または電話、ショップで受付可能ですが、ショップや電話の場合は事務手数料がかかるケースがほとんどのため注意が必要です。
eSIMはなぜ注目されるようになった?
通信事業者にとってあまりメリットがなく、消極的な姿勢を見せているeSIMですが、なぜ最近になって注目されるようになったのでしょうか。実はこの裏にはスマートフォンではないテクノロジーやデバイスの存在があります。詳しく見ていきましょう。
IoTに欠かせないeSIM
SIMカードといえば携帯電話、スマートフォンといったイメージは強いですが、実は今後通信を行うデバイスは一気に増えていくだろうと予測されています。なかでも大きなカギを握っているのが、IoTです。
そもそもIoTとは特定のデバイスや端末を指す言葉ではなく、「Internet of Things」の頭文字をとった言葉です。いわゆる「モノのインターネット」ともよばれ、スマートフォンやパソコン、タブレットなどの従来の情報端末に限らず、あらゆるものがネットワークに接続されるようになるということです。
身近な例でいえば、先ほども紹介したApple Watchなども代表的なIoTデバイスといえるでしょう。また、スマートスピーカーや自動運転車などもIoTのテクノロジーを活用したものです。
なかにはスマートフォンやApple Watchよりもはるかに小さいサイズのデバイスも生まれてくるかもしれません。そのような新たなデバイスに対して、これまでのようなSIMカードは対応できない可能性があるためeSIMが脚光を浴びているという背景もあります。
eSIMで今後どう変わる?
革新的な技術であるeSIMですが、単にSIMカードがなくなるというだけではなく、今後さまざまなことが変わっていくと予想されます。いくつか考えられることをピックアップしてみましょう。
ショップに来店する必要がなくなる
これまで携帯電話やスマートフォンを契約するといえば、ショップに足を運ぶことが一般的でした。しかし、eSIMの登場によってショップでなければできない業務や手続きがほとんどなくなると予想できます。そもそも現在、端末と料金プランの分離化が進められており、今後はショップで端末を購入するよりも、パソコンのように専門店で購入する機会が増えてくると思われます。もはや携帯電話ショップは手続きや端末を購入する場所ではなくなり、ヘルプデスクのような役割に変わっていく可能性も十分あります。
IoTデバイスの普及
今回の記事で何度か登場したApple Watchのように、これまでインターネットとは無縁だったものがeSIMの普及によってネットワークにつながるIoTデバイスが今後続々と登場してくることになります。Apple Watchのように歩数や脈拍などの健康情報を収集することによって、スマートフォンひとつで健康管理が可能になったり、スマートスピーカーによって声をかけるだけでコントロール可能なデバイスも増えていくはずです。eSIMという一見地味なテクノロジーも、そこから派生してさまざまな革新的製品が生まれてくる大きなきっかけになり得るものです。