iPhoneに採用されているガラスの秘密とは?
数あるスマートフォンのなかでも日本国内におけるiPhoneのシェアは圧倒的で、ウェブレッジの調査では2020年1月時点で半数以上のユーザーがiPhoneを選択しているという結果もあります。Androidスマホは複数メーカーが開発を手掛けていることを考えると、唯一iOSを搭載しているApple社のiPhoneがこれほどまでに大きなシェアを獲得しているのは驚異的な数字といえるでしょう。
そもそもiPhoneを選ぶユーザーの多くが、高級感のある質感や操作性の良さを挙げているのですが、その秘密を握っているのがiPhoneに使用されているガラスの素材です。そこで今回は、そもそもなぜiPhoneにはガラス素材が使用されているのか、その秘密について詳しく解説していきましょう。
iPhoneに採用されているガラスの秘密
通常、ガラスという素材は無色透明の色をしていますが、衝撃に弱い特性があります。そのため、一般的なガラス素材をそのままiPhoneに利用してしまうと、たとえケースで保護していたとしても誤って落下させてしまった場合にその衝撃で割れてしまいます。
そこで、iPhoneでは発売当初から「ゴリラガラス」とよばれる特殊な強化ガラスを採用しており、一般的なガラスよりもはるかに強い耐衝撃性を実現しているのです。当初iPhoneに採用されていた初代ゴリラガラスですが、その後2012年に改良版のゴリラガラス2が発表され、現在のゴリラガラス6まで進化をし続けています。
そもそもなぜゴリラガラスが通常のガラス素材に比べて高い強度を誇っているかといえば、製造段階に大きな秘密があります。ゴリラガラスを製造する際、カリウム塩とよばれる物質に浸けることによって、カリウムイオンがガラス内に浸透します。これによって通常のガラスに比べて表面の隙間やわずかな割れ目がなく、耐衝撃性を実現しています。
一般的なガラスが割れやすいのは、このような特殊な製法ではなく、ガラスの表面にごくわずかな隙間や割れ目が存在しているため、少しの衝撃によってその部分から亀裂やヒビが拡大していくことに起因しているためです。
一見なんの変哲もないガラス素材を例にとっても、実はiPhoneに採用されているパーツには知られざる秘密があり、これまでにない革新的な端末であることが分かります。
iPhoneにガラスが採用されている理由
iPhoneにはゴリラガラスとよばれる特殊な強化ガラスが採用されていることは分かりましたが、そもそもなぜこのような素材を採用することになったのでしょうか。もちろん、本体の強度を高めるという大きな目的はありますが、それ以外にもさまざまな理由があります。また、最近ではタッチパネルの表面だけではなく、本体の裏側にまでゴリラガラスが採用されています。この点の理由についても詳しく紹介していきましょう。
デザイン性を重視するため
2008年、日本国内において初めてiPhoneの取り扱いが始まったとき、多くの人にとってその美しい見た目はこれまでの携帯電話の常識を覆すほどのインパクトがありました。極限までボタンが排除され、シンプルで美しい見た目となめらかなフォルム。これまで折りたたみ式のケータイが主流であった日本において、常識を覆すほどの1台であったのです。
なぜ私たちがiPhoneを美しいと感じたかといえば、デザインはもちろんですが手に取った際の質感が特別なものであったためです。特にもっとも多く触れるであろうタッチパネルの部分には、ゴリラガラスが採用されていたため、なめらかで繊細な印象を抱いた人も多かったはず。iPhoneはこれまで何代にもわたってモデルチェンジを繰り返し、本体にケースを装着して使用する人も増えてきました。
しかし、つねに触れる部分でもあるタッチパネルだけは、これまでと同様にゴリラガラスが採用され続け、Appleらしい高い質感を維持することに強いこだわりが感じられます。
表面への傷の付着を防ぐため
iPhoneが登場した当時、これまでの携帯電話と決定的に異なっていたのは、折りたたみ式の本体形状ではなくつねに画面が露出した状態で使用する形状に変化したことです。これまでの携帯電話は使用するときにだけ本体を開き、使用しないときは本体を閉じているため画面へのダメージも最小限で済んでいました。しかし、つねに画面が露出した状態にあるということは、それだけダメージを負うリスクも高まります。本体寿命にも影響してくることを考えると、強度が弱く表面が傷つきやすい素材を使用した場合、それは同時にiPhoneという製品はもとより、Appleというブランドへの信頼性をも損なってしまうことになるのです。
そのため、ゴリラガラスはiPhoneの品質や信頼度を象徴するといっても過言ではないほどの存在でもあります。
ワイヤレス充電に対応するため
ゴリラガラスの特性を考えたとき、操作性や耐久性、品質などさまざまな点においてタッチパネルに採用される理由は納得できると思います。しかし、iPhone本体の背面にもゴリラガラスが採用されており、必ずしも必要ないのではないかと考える人も多いのではないでしょうか。
もちろんiPhoneのデザインや質感を向上させるという目的もあるのですが、他にも仕様上欠かすことのできない明確な理由があります。それは、ワイヤレス充電への対応です。
iPhoneシリーズではiPhone8以降の端末でワイヤレス充電(Qi充電)に対応するようになりました。ワイヤレス充電を行う際は専用の充電器(Qi充電器)を用意し、iPhoneのディスプレイ側を上向きにして置く必要があります。必然的にiPhoneの背面側が充電器に接地する形になるのですが、本体の素材によって充電の性能が大きく変わってきてしまうのです。
Appleの公式サイトでも「iPhone が充電されない場合や、充電に時間がかかる場合、iPhone を厚みのあるケース、金属製のケース、バッテリーケースに入れているときは、ケースを取り外してみてください。と案内されている通り、厚みのある素材や金属製の素材など、さまざまな制約があることが分かります。
※引用元:Apple
もしiPhoneにガラスが採用されていなかったら
ここまで紹介してきたように、iPhoneにとってガラスという素材は重要な役割を果たしていることがお分かりいただけたと思います。それでは反対に、仮にiPhoneにガラス以外の素材が使用されていたとしたらどのような問題が起こると考えられるのでしょうか。
まず、従来の折りたたみ式携帯電話にも多く採用されてきたプラスチックや樹脂素材を使用した場合ですが、ガラスのように簡単に割れる心配はないものの、タッチパネル表面に傷がつきやすくなり商品価値は大きく低下してしまうでしょう。ガラスに比べて大幅な軽量化が図れるメリットはありますが、その一方で質感はガラス製に比べて大幅に劣り安っぽく見えてしまうかもしれません。
次に、金属製の場合を考えてみると、大前提として透明な金属は存在しないためタッチパネルに使用することはできません。必然的に背面のパネルに採用することになるのですが、先ほども紹介した通りワイヤレス充電の際に金属製の素材は充電性能を低下させてしまうおそれがあるため、ベストな選択肢とはいえないでしょう。また、ガラスに比べて傷が目立ちやすい特性もあります。割れてヒビが入ってしまうリスクはありませんが、総合的に考えるとガラス製のほうが適していると考えられます。
しかし、AppleのiMacやMacBookシリーズのようにアルミニウム削り出しのデバイスも存在することから、将来的にはガラス素材ではない革新的なデザインのiPhoneが登場してきてもおかしくはないでしょう。
iPhoneの破損を防ぐために
iPhoneには非常に強度の高いゴリラガラスが採用されていますが、だからといってダイヤモンドのように固いわけではなく、コンクリートなど固いところに落下させてしまうと割れてしまうおそれがあります。そのため、iPhoneの破損を防ぐためには多くの人がケースや画面保護のためのシートなどを貼って保護しています。
基本的には手帳型の全面を保護できるようなケースが性能は高いですが、使い勝手を重視するのであれば背面のみを保護する形状のケースもおすすめです。もしその場合はケースの背面にリングを取り付けて操作時の安定性を確保したり、ディスプレイに専用の保護シートを貼ったりするなどして対策を強化するのがおすすめです。