タブレット端末は教科書として定着するか?実現に向けた課題とは

タブレット端末は教科書として定着するか?実現に向けた課題とは

iPadやAndroidのタブレット端末を、普段の業務や私生活で活用している方も多いと思います。モバイル端末が広く社会に浸透した現在、学校教育の現場もICTが積極的に活用されるようになりました。なかでも、タブレット端末やノートPCは次世代の教科書として活用が期待されています。

本記事では、タブレット端末は今後教育現場において、次世代の教科書として定着する可能性があるのか、導入に向けたメリットデメリット、課題についても詳しく解説します。

文部科学省が進める「GIGAスクール構想」

文部科学省が進める「GIGAスクール構想」

全国の小中学校へタブレット端末の導入が拡大している背景には、2019年に政府が掲げた「GIGAスクール構想」があります。

ビジネス業界はもちろんのこと、私たちの社会全体においてICTの活用は切っても切り離せないものとなっています。そこで、政府は児童生徒に向けて充実したICT教育を行い、将来のIT人材を育成するために1人1台のPC端末を整備するとともに、全国の公立学校に高速ネットワーク環境も整備する方針を決めました。

充実したICT環境を整備することで、児童生徒一人ひとりに最適化された学習プランを提供する基礎ができ、創造性を育む教育が実現できると期待されています。また、教育現場にICT環境が整備されることによって、授業の準備や成績処理といった教員の負担を軽減することにもつながり、長時間労働が指摘されている教育現場の働き方改革も実現できるとされているのです。

これまでアナログ的な手法で行われてきた学校教育を、ICT化へ移行し最適化を図ることがGIGAスクール構想の本質であり、PCだけでなくタブレット端末の利活用も積極的に進められています。

小中学校へのタブレット端末導入の現状

小中学校へのタブレット端末導入の現状

GIGAスクール構想のもとでICT化が進む学校教育ですが、実際にPCやタブレット端末が導入されている小中学校はどの程度の割合なのでしょうか。

文部科学省が2021年8月に調査した「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果」によると、公立の小学校のうち96.1%、中学校では96.5%が全学年または一部の学年で端末の利活用を開始していることがわかっています。大半の公立学校ではICT化が着々と進んでいます。

なお、上記の数値はタブレット端末に限定したものではなく、PCも含んだ導入状況です。参考情報としてOS別の割合も公表されており、約40%がChromeOS、30%がWindows、そして残りの30%がiOSという結果となっています。
ChromeOSとWindowsが過半数を占めることを見ると、ノートPCの導入割合が高いことがうかがい知れます。一方、iOS、すなわちiPadを導入している学校も全体の3割と高い傾向にあることがわかりました。
出典:文部科学省「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果」

タブレット端末を教科書として運用するメリット・デメリット

タブレット端末を教科書として運用するメリット・デメリット

ノートPCよりも持ち運びがしやすいタブレット端末は、電子書籍のリーダーとして活用するユーザーも少なくありません。教育現場においては教科書として活用することもできるでしょう。現時点では紙の教科書で授業を進める学校が大半ですが、今後タブレット端末を教科書として運用する方法が定着した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。また、反対にデメリットとして考えられるポイントも解説します。

メリット

タブレット端末は本体が軽量で、膨大なデータを保存できることから、学校と家庭を行き来する際に身体への負担を軽減できるメリットがあります。大量の教科書を詰め込んだランドセルやカバンは、大人でも重いと感じることから、通学が楽になります。

また、タブレット端末の場合、従来の教科書のようなテキストや画像はもちろんのこと、動画や音声といったコンテンツも採用しやすいメリットがあります。たとえば、英語の正しい発音を確認したい場合に教科書では理解しにくいですが、タブレット端末であればいつでも手軽にリスニング学習ができます。

さらに、ネットワークに接続し学習状況のデータをアップロードすることで、児童や生徒一人ひとりの学習進捗状況や理解度を教員が一元的に把握しやすいのも大きなメリットといえます。理解度が追いついていない児童や生徒に対しては、個別に学習方針や学習プランを検討するなど、きめ細かい指導が実現できます。

タブレット教科書のメリット
  • 身体への負担軽減
    重い教科書の持ち帰り、置き勉が不要になり忘れ物も減る。
  • 画像や音声コンテンツの活用
    英語など、リスニングや発音教育のサポートに役立つ
  • 学習進捗状況や理解度を一元的に把握
    データ化することで教員の負担も軽減される。情報の共有も迅速になる。

デメリット

教育現場ではこれまで、長年にわたって教科書をベースとした学習方法が採用されてきました。そのため、教員のなかにはタブレット端末を授業にどう活用すれば良いのかが分からず、戸惑うケースも少なくありません。ハードウェアやネットワーク環境は整備できたとしても、それをどう活かしていくかを教員側が研究しなければなりません。

また、タブレット端末を用いて学習以外の用途に利用されるリスクもあり、十分なリテラシー教育を並行して行わないと逆効果になる可能性もあるでしょう。

教育現場へのタブレット端末の導入はまだまだ始まったばかりであり、試行錯誤を繰り返しながら模索し続けている学校も少なくありません。

タブレット教科書のデメリット
  • 教員にとっても新しいツールであること
    教員によって知識やスキルが違い、中には活用できない教員もいること
  • 学習以外に利用される恐れがあること
    子供によっては学習以外、例えばゲームや友人とのチャットに利用する可能性があること

タブレット端末を活用した授業の定着にはさまざまな課題が残る

タブレット端末を活用した授業の定着にはさまざまな課題が残る

今回紹介してきたように、「GIGAスクール構想」のもとで全国の学校へタブレット端末の普及が進められていますが、まだまだ課題は山積みの状況です。文部科学省の調査でも、一斉にアクセスしようとするとネットワークが混雑し動作が遅くなるなどの問題が指摘されています。

しかし、このようなハードウェアの課題を解決できたとしても、教育現場でどのように教科書として利用していくかといった問題は残ったままです。児童や生徒のなかには自主的にタブレット端末を教科書として活用し、効率的に学習を進められる人もいるでしょう。しかし、すべての児童・生徒に公平な学習機会を与えるという意味で、教育現場にタブレット端末を定着させるのはもう少し時間がかかりそうといえるでしょう。

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