通信障害への対策として注目される「ローミング」とは何か?当面の現実的な対策法も紹介

通信障害への対策として注目される「ローミング」とは何か?当面の現実的な対策法も紹介

2022年7月2日、KDDIにおいて大規模な通信障害が発生し、7月4日に復旧するまで61時間にわたって通信不能または通信がしづらい状況が続きました。これまでに、これほど大規模な通信障害は前例がなく、携帯電話事業を管轄する総務省もKDDIに行政指導を行う事態に発展。同時に、今後同様の事態が発生した場合に「ローミング」の実施が検討されるようになりました。

本記事では、ローミングとは何かを解説するとともに、今後の見通しについても紹介します。

通信障害発生時に考えられる影響

通信障害発生時に考えられる影響

今回発生したKDDIの通信障害は、約3日にわたって全国で発生し、音声通話では約2,278万人、データ通信では765万人以上に影響がおよびました。

現在、モバイルネットワークは社会的なインフラの一部として定着しており、物流業界や行政サービス、金融機関、交通機関などでも活用されています。全国的にネットワークがダウンしたことにより、これらの事業に大きな影響がおよびました。

では、私たち個人の携帯電話ユーザーにとってはどのような影響が挙げられるのでしょうか。顕著な影響として現れるのが音声通話が不能になることです。携帯電話が普及した現在、街のなかで公衆電話を見つけるのは簡単なことではありません。通信障害が発生すると実質的に音声通話ができる手段がなくなり、万が一の際に緊急通報ができなくなり命に関わる危険もあるのです。

ローミングとは

ローミングとは

今回の通信障害は影響範囲が大きかったことから、政府では今後同様の事態が発生した場合に備えて、通信事業者間でのローミング実施の検討に入りました。

ローミングとは一言で表すと、契約中の事業者以外でも通信できるようにする仕組みのことを指します。たとえば、通常、ドコモで契約しているユーザーはドコモのネットワークしか使用できませんが、非常時にはKDDIやソフトバンク、楽天モバイルといった他社のネットワークも利用できるようにすることです。
ローミングと聞くと、多くの方は国際ローミングを連想するのではないでしょうか。これも基本的な仕組みは同じであり、国内の通信事業者が海外の通信事業者と提携することで、現地のSIMを契約しなくても手持ちのスマートフォンの設定を変更するだけで通信ができるのです。

また、国内におけるローミングの例としては、楽天モバイルとKDDIのケースが挙げられます。楽天モバイルではKDDIと提携し、自社の通信エリアがカバーできていない部分をパートナー回線として提供しています。

国内ローミングが実現する見込みは?

国内ローミングが実現する見込みは?

非常時に備えて、ネットワークインフラを安定的に提供していくための手段としてローミングは有効であるといえます。しかし、現実問題として考えたとき、大手キャリアのネットワークを相互にローミングすることは可能なのでしょうか。

まず、すでに国際ローミングや国内ローミングの事例がある通り、技術的には可能といえるでしょう。一方で、運用にあたってのルールや管理面におけるいくつかの課題は残っています。

現在、携帯電話の基地局は各キャリアが個別に建設しており、運用も分かれている状態です。もし、ローミングを実行するとなった場合、非常時の管理はどの事業者が担うのか、ローミング中に何らかのトラブルがあった場合はどちらの通信事業者が責任を負うことになるのか、といったことも検討しなければなりません。

今回の大規模通信障害を受けて、総務大臣は国内ローミングを前向きに検討しはじめたことを発表しましたが、同時に上記のような課題も解決しながら運用をスタートしなければならないとしており、実現するにはもう少し時間がかかると考えられます。

国内ローミングの現状と課題
  • すでに実施している通信会社もある
    楽天モバイルがカバーできない通信エリアをKDDIがカバーするかたちでローミング提携。
  • 基地局の建設と運用の問題
    各キャリアが行っているため、他社が利用するにはルールが必要。
  • 非常時の責任
    ローミング中に問題が発生した場合、責任の所在はどうなるのかなど、ルールが必要。

当面の現実的な対策法とは

当面の現実的な対策法とは

通信障害が発生すると緊急通報ができなくなり、命の危険に関わることはもちろんですが、仕事にも支障をきたすことが考えられるでしょう。日常生活のあらゆる場面で影響がおよぶことを考えると、国内ローミングの運用が開始されるまでは私たちが個別に対策を講じる必要があります。

現時点でどのような対策が有効なのか、2つの例をもとに紹介しましょう。

格安プランと組み合わせた2台運用

もっとも手軽にできる方法としては、現在利用しているスマートフォンにもう1回線を追加で契約し、格安プランとの2台持ちで運用する方法です。

たとえば、ドコモやソフトバンクを利用している方の場合、KDDIの格安プラン「povo」を契約すれば毎月のランニングコストを0円で維持することもできます。通話料は30秒あたり22円、データ通信は24時間使い放題で330円、または1GB(1週間)で390円、3GB(30日間)で990円といったように多様なパターンから選択できるのも便利です。

一方、すでにKDDIを契約している場合には、ソフトバンクが提供する「LINEMO」がおすすめ。1ヶ月あたり3GBまでのデータ通信で990円という格安のランニングコストで維持できます。

2台目の注意点
  • メインの端末と異なる通信会社を選びましょう。
  • 0円で維持できるプランでは、一定期間使用しないと解約される可能性があります。適度に使用するようにしましょう。

デュアルSIMでの運用

上記で紹介した2台運用は、スマートフォンを2台用意し、それぞれにメイン回線のSIMとサブ回線のSIMを登録して使用することが前提となります。しかし、これからサブ回線を用意するとなると、新たにもう一台のスマートフォンを購入しなければならず、経済的な負担を強いられるという方も多いでしょう。

そこでおすすめしたいのが、デュアルSIMで運用する方法です。デュアルSIMとは、1台のスマートフォンに2回線分のSIMを登録し切り替えて使用する運用方法です。SIMカード(物理SIM)を2枚挿入するパターンや、物理SIMとeSIM(SIMの情報を端末に登録する方法)を併用するパターン、eSIMを2回線登録するパターンがあります。

LINEMOとpovoはデュアルSIMでの運用が保証されているため、現在使用している端末にデュアルSIMを設定すれば新たにサブ回線用の端末を購入する必要もありません。

デュアルSIMの対応機種

パターン 対応機種
SIMカードを2枚挿入する AQUOS-zero2、Xperia-5-II、SH-M13など
SIMカードとeSIMを併用する iPhoneXS~iPhone12シリーズ、AQUOS-sense4-liteなど
eSIMで2枚を管理する iPhone13シリーズ以降

国内ローミングが開始されるまでの間、サブ回線をうまく活用しよう

国内ローミングが開始されるまでの間、サブ回線をうまく活用しよう

日常生活に大きな影響を及ぼしたKDDIの大規模通信障害。あらためて携帯電話回線は私たちにとって重要な生活インフラであることを認識させられる出来事でした。

停電や断水に備えて防災備蓄品を準備しておくのと同様に、通信手段も非常時に備えてバックアップ回線を確保しておくことが求められます。政府と通信事業者では今後国内ローミングの実施に向けて準備が進められていきますが、それまでの間は格安プランをうまく活用しながらサブ回線を用意しておくことが現実的な対策といえるでしょう。

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