iPhoneの修理で本体のデータは消去される?修理メニューや依頼先による違いとは
iPhoneに何らかの不具合が生じて修理を依頼する際、本体に保存されたデータが消去されるのではないか、と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
実際に修理受付のタイミングではデータ消去に関する注意項目があり、バックアップの取り忘れなどがあると電話帳や写真・動画などの一切のデータが消えてしまったというケースも少なくありません。
そこで本記事では、iPhoneの修理においてデータが消去されるのはどのようなケースなのか、データ消去のトラブルを防ぐために覚えておきたいこともあわせてご紹介します。
目次
iPhoneの修理でデータが消去される理由
AppleストアやAppleのサポート、キャリアショップなどでiPhoneを修理に出す際には、さまざまな注意事項が説明されます。そのなかの重要項目のひとつに「データが消去される」という内容があり、戸惑った経験はないでしょうか。
そもそも、なぜiPhoneの修理を出すとデータが消去されるのでしょうか。
大前提として、すべての修理項目において必ずデータが消去されるものではありません。iPhoneのデータは本体に組み込まれたストレージに保存されており、この部分を交換しなければならない場合にデータが消去されてしまうのです。
Appleでは「基盤」という表現を使っていますが、これはPCのマザーボードに相当する部分です。PCの場合はHDDやSSDなどがマザーボードに接続されていますが、iPhoneをはじめとしたスマートフォンの場合はストレージやメモリ、チップ(CPU)なども基板上に組み込まれています。
すなわち、基盤に何らかの異常がある場合には、ストレージに問題がなかったとしても基盤ごと交換しなければならず、結果として本体に保存されたデータが消去されてしまうのです。
iPhoneの修理で消去されるデータの種類
iPhoneの修理でデータが消えるといっても、写真や動画などの数が少ない場合にはそれほど気にならないという方も多いでしょう。
しかし、iPhoneのデータは写真や動画以外にもさまざまな種類があり、場合によっては仕事に支障をきたす可能性もあります。どのようなデータが消去され、それによってどういった影響が出るのかもあわせて考えてみましょう。
まず、消去されるデータの主な種類は以下の通りです。
消去される主なデータ
写真・動画 |
電話帳 |
本体の設定 |
SMSの履歴 |
アプリのデータ |
メモ帳 |
音楽・映画・アプリ・ブックなどの購入履歴 |
各種パスワード など |
たとえば、電話帳が消去されると家族や友人はもちろんのこと、職場の同僚や上司、取引先などの連絡先も失われ、一切の連絡がつかなくなる可能性があります。
また、本体の設定が消去されてしまうと、ホーム画面に配置されていたアプリやフォルダ、壁紙、着信音、辞書登録済みの単語なども失われ、一から設定をし直さなければなりません。さらに、仕事に必要な情報やアイデアなどをメモ帳に書き留めていた場合、それらも失われてしまうため業務に大きな支障をきたす可能性もあるでしょう。
データ消去のリスクが低い修理とは?
iPhoneの修理ではすべてのケースにおいてデータが消去されるとは限らないと紹介しました。では、データ消去のリスクが低いのはどのような修理メニューなのでしょうか。
バッテリー交換
データ消去のリスクが低いのは、一言でいえば基盤交換の必要がない修理メニューです。
冒頭でも紹介した通り、iPhoneの基盤にはCPUやストレージ、メモリなどが実装されており、これらに異常があると基盤ごと交換しなければなりません。
しかし、本体に内蔵されているリチウムイオンバッテリーは基盤と独立した構造になっているため、経年劣化などによってバッテリー交換を行う場合には基盤に影響することがないためデータが消去されるリスクは低いといえるでしょう。
長期間にわたってiPhoneを使用していると、ユーザーでも気付かない間に基盤が腐食しているケースもあります。このような場合、バッテリー交換とあわせて基盤の交換も行わなければならず、結果としてデータが消えてしまう可能性があります。
また、バッテリー交換はiPhoneの修理メニューのなかでも特に数が多いため、ECサイトなどで交換用のパーツが安価に販売されています。経験や知識に乏しいユーザーがDIYによって交換作業を行うと誤って基盤を損傷する可能性もあり、この場合もデータが消去されるリスクが高まります。
ガラス割れ・ヒビ割れ
2つ目のケースとしては、外装の損傷です。特にディスプレイのガラスパネルの割れやヒビの修理は、本体の蓋を開けることなく外装の交換のみで済むケースが多いです。
本体の蓋を開ける必要がないということは、内部の基盤を点検・交換することもないため、データ消去のリスクは極めて低いといえるでしょう。
ただし、ガラスパネルの割れやヒビとあわせて内部基盤の損傷や劣化が疑われる場合には交換作業が必要になり、データが消去されるリスクも高まります。
iPhoneの修理でデータが消去されるパターン
上記とは反対に、iPhoneの修理においてデータが消去される可能性が高いのはどういったケースなのでしょうか。
水没
Appleへ修理を依頼する段階において、外装の傷や割れ、凹みなどのほかにも水没反応が出ていないかを確認します。現在のiPhoneはほとんどの機種が防水仕様になっていますが、温度差が激しい場所で使用していたり、SIMカードスロットの蓋がしっかり閉まっていない状態で使用していると内部に水分が浸潤し水没反応を示すことがあります。
水没反応が見られた場合、iPhoneが問題なく動作している場合であっても基盤そのものを交換しなければならず、データが消去されてしまいます。
ユーザーが知らない間にiPhoneが水没していたというケースは意外と多いため、修理に出す前に確認しておくと安心です。iPhoneの水没反応は以下の方法で確認できます。
水没の確認方法
- SIMカードスロットを取り出す(iPhone12シリーズ以降は本体の左側側面、iPhone11シリーズ以前は右側側面)
- 挿入口の内側にある液体侵入インジケーターを確認
- 通常:白またはシルバー
- 水没:赤色
特にiPhoneの電源が入りにくい場合やフリーズを頻繁に繰り返す場合、画面表示や音声などに異常が見られる場合には水没の可能性が考えられるため、上記の方法で確認しておきましょう。
基盤の故障
水没反応が見られない場合でも、基盤に何らかの異常が発生しているケースもあります。
たとえば、強い衝撃や圧力によって基盤に物理的なダメージが加わった、DIYでの修理や交換作業に失敗して基盤を傷つけてしまった、などのケースが代表的です。また、リチウムイオンバッテリーの劣化が進むとバッテリーから熱が放出されることがありますが、それによって基盤の一部が損傷するケースもあるようです。
データ消去のリスクが高い修理の依頼先
iPhoneの修理内容が同じであっても、修理の依頼先によってもデータ消去のリスクは変わってきます。データが消去される可能性が高いお店はどこなのでしょうか。
Appleストア・Apple正規サービスプロバイダ
データ消去のリスクが高いのは、一言でいえばApple公式の修理サービスを受けられるお店です。
たとえば、全国に10店舗を構えるAppleストアやApple正規サービスプロバイダは、修理内容によっては店頭での交換や修理が受けられ、Apple公式ということもあり質の高いサポートが魅力です。
しかし一方で、パーツに不具合が見つかった場合はパーツまたは本体そのものを交換するため、データが消去されるリスクは高いといえます。
Appleサポート(配送修理)
近所にAppleストアがない場合や、お店へ来店する時間がとれない場合に便利なのがAppleサポートでの修理です。電話やオンラインでの診断結果をもとに、修理が必要であれば配送業者が自宅まで訪問し端末を引き取ってくれるため便利なサービスですが、こちらもAppleストアと同等の基準で修理を行うためデータ消去のリスクは高いのです。
キャリアショップ
ドコモやau、ソフトバンクといったキャリアショップの場合、修理端末を店頭で預かった後はメーカーへ修理を依頼しています。
そのため、お店にAppleという看板はないものの、実質的にはApple公式の修理サービスと内容はほとんど変わらず、データ消去のリスクは高いといえるでしょう。
データ消去のリスクが低い修理の依頼先
iPhoneの修理にあたってデータ消去のリスクが比較的低いのは、Apple公式以外の修理専門店です。
技術力の高い修理専門店では、本体の動作に異常が認められる場合でもデータを残したまま基盤の修理が可能であり、大切なデータを引き継ぐことができます。
ただ、基盤の損傷が激しく電源がつかない場合や、ソフトウェアに異常が認められる場合などはデータの消去が避けられないことも多いです。そのため、修理を依頼する際には必ずデータの取り扱いについて確認しておくか、事前にバックアップをとっておくことが大切です。
また、AppleストアやApple正規サービスプロバイダなどは修理品質が均一化されており、基本的にどのお店に修理を依頼しても品質が変わることはありません。しかし、それ以外の修理専門店では技術力や信頼性に差があり、特に修理実績が少ない専門店では誤ってデータが消去されるリスクもあり注意が必要です。
消去されたデータの復旧は可能?
大切なデータがiPhoneから消去された場合、復旧することはできないものかと考える方も多いでしょう。
結論からいえば、基盤そのものを交換または初期化した場合には、データの復旧は難しいです。物理的に基盤を交換していると、データは交換前の基盤に残っているため復旧そのものは不可能であるほか、初期化している場合でもデータはすべて消えてしまいます。
事前にバックアップをとっていない限り、本体からデータを取り出したり復元することは難しいでしょう。
iPhoneのデータを復旧できる可能性があるのは、電源が入らなくなったiPhoneや画面表示やタッチパネルの操作ができなくなったiPhoneなどです。これらの場合、iPhone本体のストレージにデータは残ったままになっているため、特殊なソフトウェアなどを用いることでデータを取り出せる可能性があるのです。
修理専門店によっては、このようなデータ復旧に対応しているところもあるため、修理を依頼する前にデータを取り出すことができないかを相談してみましょう。
大切なデータを消さないためにこまめなバックアップを
iPhoneをはじめとしたスマートフォンは毎日のように肌身離さず持ち歩くため、強い衝撃や圧力などが加わり故障するリスクは高いです。
今回紹介してきたように、本体の状態によってはデータを復旧できる可能性はありますが、すべてのケースにおいて可能というわけではありません。重要なのは、故障や破損に備えてこまめにバックアップをとっておくことであり、そのためにAppleではiCloudというサービスも提供しています。
iCloudは5GBまで無料で利用できるほか、それ以上の容量へ拡張する場合でも月額数百円で利用できます。iPhoneの設定を変更しておけば、充電のタイミングなどで自動的にバックアップをとっておけるため手間がかかる心配もないでしょう。是非検討してみては如何でしょうか。