【バッテリーの豆知識】iPhoneに採用されているリチウムイオン電池の仕組みと構造

iPhoneに採用されているリチウムイオン電池の仕組みと構造

iPhoneやiPadにとって不可欠なパーツのひとつにリチウムイオン電池があります。一度の充電で長時間駆動が実現できているのはリチウムイオン電池が搭載されているおかげでもあり、現在ではApple WatchのようなウェアラブルデバイスやノートPC、ゲーム機などにも幅広く活用されるようになりました。

しかし、リチウムイオン電池という言葉は聞いたことがあっても、内部がどういった仕組みになっているのか、なぜ繰り返し充電ができるのか疑問に感じたことはないでしょうか。また、一口にリチウムイオン電池といってもさまざまな種類があり、用途に応じて使い分ける必要があります。

そこで本記事では、身近でありながら意外と知られていないリチウムイオン電池について詳しく解説します。

一次電池と二次電池の違い

一次電池と二次電池の違い

バッテリーに関する理解を深めるうえでは、まず大前提として一次電池二次電池というものがあることを覚えておく必要があります。

一次電池とは

一次電池とは、一言でいえば使い捨てタイプの電池のことを指します。たとえば、100円ショップやホームセンターなどで販売されている単3や単4型、ボタン型などのアルカリ電池、リチウム電池が一次電池に該当します。

電池の内部には化学反応を引き起こし電力を発生させる物質が入っていますが、一次電池は化学反応が終了したら再び電力を供給することができません。そのため、繰り返し充電することができず電池残量がなくなったら処分する必要があります。

二次電池とは

一方、繰り返し充電しながら使用できるのが二次電池とよばれるタイプです。一次電池は化学反応が終了したら電力の供給ができなくなりますが、二次電池の場合は逆反応が可能であり、これによって繰り返し充放電ができるのです。

二次電池にもさまざまなタイプが存在しますが、広く活用されているものには鉛蓄電池やリチウムイオン電池などがあります。

二次電池は繰り返し使用できることからゴミの処分に手間がかからないほか、環境にもやさしいといった特徴があります。一方で、電池の残量がなくなったら充電が必要であり、すぐには使用できないということと、専用の充電器も用意しておかなかればならないといったデメリットもあります。

しかし、使い捨てタイプの一次電池に比べて経済的にもメリットがあり、実用性にも優れていることから、二次電池のニーズは拡大している傾向にあります。

バッテリー・電池の主な種類と特性

バッテリー・電池の主な種類と特性

バッテリーや電池の内部には、化学反応によって電力を生じる物質が入っていると紹介しました。電力を生じさせる物質はひとつではなく、さまざまな種類が存在し、用途や特性にあわせて使い分けられています。

  1. 鉛蓄電池
  2. リチウムイオン電池
  3. ニッケル水素電池
  4. 全固体電池

どのような種類のバッテリー・電池が存在するのか、主な4つの種類とそれぞれの特性についても紹介しましょう。

鉛蓄電池

鉛蓄電池とは、その名の通り鉛が使用されているバッテリーのことです。鉛と酸化鉛によって構成された極板があり、電解質には硫酸が使用されています。

鉛が多く使用されていることから重量があり、持ち運びには適していません。しかし、単純な構造のため低コストで製造でき、古くからさまざまな用途で活用されてきた歴史の長いバッテリーでもあります。現在でも自動車用バッテリーをはじめとして活躍しており、私たちの生活において欠かせない存在です。

リチウムイオン電池

リチウムイオン電池とは、両極の間をリチウムイオンが移動する際の化学反応によって電力を生じさせるバッテリーのことです。内部にはリチウム化合物と炭素によって構成された極板と電解質が入っています。

リチウムイオン電池はほかのバッテリーに比べてエネルギー密度が高く、小型・軽量であることが特徴として挙げられます。携帯性に優れていることから、さまざまなモバイル機器に使用され、一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。私たちが普段使用しているiPhoneやiPadなどにもリチウムイオン電池が搭載されています。

ニッケル水素電池

ニッケル水素電池とは、金属水素化物と酸化ニッケルの化学反応を起こすことで電力を生じさせるバッテリーのことです。

ニッケルと水素化物の2つの極板によって構成されており、電解質にはアルカリ性液体が用いられます。「水素電池」とありますが、水素燃料電池とは異なり水素は使用しないため安全性は高いです。

また、数あるバッテリーのなかでも比較的寿命が長く、効率性・信頼性にも優れているため実用性の高いバッテリーといえるでしょう。

全固体電池

全固体電池とは、固体材料の電解質を使用したバッテリーのことです。リチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度と安全性を両立できると期待されており、熱安定性や耐衝撃性に優れていることが特徴です。また、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などに比べて充電速度の向上も見込まれています。

現在は研究開発が進められている段階であり実用化には至っていませんが、近い将来バッテリー性能の飛躍的な向上を実現する技術として注目されています。

電池の種類まとめ

電池の種類 内容 使用用途
鉛蓄電池 鉛が使用されているバッテリー 自動車など
リチウムイオン電池 リチウムイオンが移動する際の化学反応によって電力を生じさせるバッテリー PC・スマートフォンなど
ニッケル水素電池 金属水素化物と酸化ニッケルの化学反応を起こすことで電力を生じさせるバッテリー リモコン、おもちゃ、懐中電灯など
全固体電池 固体材料の電解質を使用したバッテリー まだ実用化されていない

リチウムイオン電池の仕組み

リチウムイオン電池の仕組み

上記で紹介したバッテリーのなかでも、特に実用性が高く幅広い用途で活用されているのがリチウムイオン電池です。どういったメカニズムで繰り返し充放電ができるのか、内部の仕組みを詳しく解説しましょう。

すでに紹介した通り、リチウムイオン電池の内部にはリチウム化合物と炭素によって構成された極板と電解質が入っています。

リチウムイオンの放電

引用元:コーティングマガジン

具体的には、正極にはリチウムコバルト酸化物をはじめとしたリチウムを含む化合物、負極には炭素が使用されていますが、ここに電流を流すと電解液を通してリチウムイオンが両極を行き来します。リチウムイオンが負極から正極に移動すると、両極の間に電位差が生じるため充電が可能となります。

一方、電気を使用(放電)する際には、正極と負極をつなぐ回路を作ることでリチウムイオンが正極から負極へ移動していき、この際に電力が発生します。

iPhoneにリチウムイオン電池が採用されている理由

iPhoneにリチウムイオン電池が採用されている理由

鉛蓄電池やニッケル水素電池などさまざまな種類のバッテリーが存在しているにもかかわらず、なぜiPhoneをはじめとしたスマートフォンにはリチウムイオン電池が採用されているのでしょうか。

それは、上記でも紹介した通りエネルギー密度が高く、小型・軽量であることが挙げられます。たとえば、鉛蓄電池をスマートフォンに使用してしまうと、バッテリーだけで数キログラムといった重量に達し、携帯電話としての使い勝手は大幅に低下してしまいます。

また、ニッケル水素電池はかつてノートパソコンなどに使用されていた時代もありましたが、リチウムイオン電池に比べるとエネルギー密度が低く長時間の駆動には不向きです。特にスマートフォンの機能は年々進化しており、消費電力も高まっていることから、より高密度のエネルギーを充放電できるバッテリーが求められていました。

さらに、リチウムイオン電池のもう一つの特性として、環境負荷が比較的小さく地球環境にやさしいことが挙げられます。有害物質の配合量が少なく、処分する際にも安全かつ環境汚染のリスクが少ないことも大きな強みといえるでしょう。

このような理由から、現在ではiPhone、iPadをはじめとした多くのモバイル端末にリチウムイオン電池が搭載されるようになったのです。

リチウムイオン電池の種類と用途

リチウムイオン電池の種類と用途

リチウムイオン電池はさまざまなモバイル端末に使用されていると紹介しましたが、これはあくまでも一例に過ぎません。

リチウムイオン電池の種類
  • コバルト酸リチウムイオン電池
  • マンガン酸リチウムイオン電池
  • リン酸鉄リチウムイオン電池
  • リチウムイオンポリマーバッテリー
  • リチウムチタン電池

一口にリチウムイオン電池といってもさまざまな種類が存在し、用途に応じて使い分けられているためです。

コバルト酸リチウムイオン電池

コバルト酸リチウム電池は、リチウムイオン電池のなかでも代表的なタイプに分類されます。スマートフォンやタブレット、ノートパソコン、デジタルカメラなどの小型電子機器に広く使用されているのがこのタイプです。リチウムイオン電池のなかでも特に高いエネルギー密度を持ち、小型・軽量化が可能で携帯性に優れています。

マンガン酸リチウムイオン電池

マンガン酸リチウム電池は、コバルト酸リチウム電池に比べて製造コストが安価で、高い安全性と長寿命であることが特徴です。過酷な環境下でも安全に使用できることから、電気自動車やハイブリッドカー、家庭用蓄電池など幅広い用途で使用されています。

リン酸鉄リチウムイオン電池

リン酸鉄リチウム電池は、高い耐久性と長寿命、熱安定性をもち、なおかつ放電時の電圧変化も少ないという特徴があります。さらに、マンガン酸リチウムイオン電池よりも安価なコストで製造できるため、価格を大幅に抑えることも強みです。

特に長時間の駆動と高出力が求められる電気自動車やハイブリッドカー、再生可能エネルギーなどの用途に適しています。

リチウムイオンポリマーバッテリー

リチウムイオンポリマーバッテリーは、電解質にポリマーとよばれる化合物を加え、ジェル状にしたバッテリーのことです。薄型・軽量化が可能で設計の自由度が高いメリットがありますが、その反面衝撃を与えると発火や炎上の恐れがあり危険を伴うというデメリットもあります。スマートフォンやタブレット、ウェアラブルデバイスなどに広く使用されています。

リチウムチタン電池

リチウムチタン電池は、負極側へチタン酸リチウムとよばれる物質を使用したバッテリーです。長寿命と安全性を両立していますが、エネルギー密度が低いため小型化が難しい点がデメリットです。電気自動車やバス、トラック、産業用蓄電池などに広く使用されています。

リチウムイオン電池はモバイルバッテリーにも搭載

リチウムイオン電池はモバイルバッテリーにも搭載

リチウムイオン電池はスマートフォンやタブレット端末だけでなく、モバイルバッテリーにも採用されています。コンパクトでありながらもiPhone数台分を充電できるほど大容量で、安価な製品も多く存在します。

しかし一方で、リチウムイオン電池は強い力を加えたり、極端に高温の場所に放置しておいたりすると発火のおそれもあります。外部から強い衝撃が加わると、リチウムイオン電池内部にあるセパレーターとよばれる部分が損傷します。セパレーターは本来、正極と負極を隔てる役割を果たしており、これによってショートを引き起こすことなく安全性が保たれています。

しかし、セパレーターが損傷することで正極と負極が直接つながる状態となり、ショートを引き起こし発火するおそれがあるのです。多くのメーカーではある程度の衝撃や圧力が加わっても安全なように対策が施されていますが、リチウムイオン電池の構造上このような危険性があることは十分理解したうえで取り扱うことが重要といえるでしょう。

また、リチウムイオン電池を使用しているモバイルバッテリーやスマートフォン、タブレット端末を長く使用していると、電池そのものが膨張し変形してくることがあります。これは内部に密封されている電解液が酸化しガスが発生するためです。膨張したからといってただちに発火や爆発の危険があるとはいえませんが、バッテリーそのものが劣化していることに変わりはないため、できるだけ早めに買い換える必要があるでしょう。

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